「記録的な高水温」の夏、
平塚の9月の水温は
この3年でいちばん低かった
─ シイラは増えず、
「初記録」のワフーも実は毎年来ていた
2026年8月は世界の海面水温が観測史上最高を更新し、日本近海も広い範囲で平年より高かった。 ならば暖水性の魚が増えているのでは ─ そう思って平塚の釣果データを 3年分並べると、8月の高さは確かに見えたが、9月はこの3年でいちばん低かった。 シイラの割合も増えていない。さらに、8月に当サイトが「初めての記録」と紹介したワフーは、 原文を読み直すと2024年も2025年も釣れていた。今年の夏、平塚の魚の顔ぶれは例年どおりだった。
どうやって調べたか
当サイトは海面水温を機器で毎日測っているわけではない。そこで、2024年から報告が続いている平塚の 庄三郎丸1隻に絞り、船長が釣果報告に書いた「水温◯℃」を月ごとに平均した。 同じ船・同じ海域の3年分なので、年ごとの違いは比べやすい。ただし測器の連続観測ではなく、 書かれた日の数字を拾ったものなので、目安として見てほしい。
8月は高かった。9月はこの3年でいちばん低い
| 月 | 2024年 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|---|
| 7月 | 25.5℃ | 26.6℃ | 26.5℃ |
| 8月 | 28.6℃ | 26.6℃ | 27.5℃ |
| 9月 | 27.0℃ | 26.0℃ | 24.9℃ |
平塚・庄三郎丸の船長が釣果報告に書いた水温の月平均(1か月あたり15〜33日分)。2026年9月は26日まで。
2026年8月は27.5℃で、2025年の26.6℃より高い。「高水温の夏」というニュースとも食い違わない。 ただし2024年8月は28.6℃とさらに高く、今年だけが飛び抜けていたわけではない。
違いが出たのは9月だ。2026年9月は24.9℃で、この3年でいちばん低い (2025年26.0℃、2024年27.0℃)。今年の9月分は26日までで、例年いちばん冷える月末がまだ入っていない。 それでも一番低いので、平塚沖に関しては、今年は8月の高さのあと水温の下がり方が早かったと言える。
暖水性の魚の目安・シイラは増えていない
暖かい海を好むシイラで、魚の側に変化が出ているかを見た。 まず全国の件数だけを見ると、5〜9月にシイラが釣れた出船は2024年99件・2025年89件・2026年178件と、 今年は倍に増えたように見える。だがこれは見かけの増加だ。同じ期間に当サイトが釣果を集めている船は 126隻→141隻→371隻と、3年で3倍近くに増えている。全出船に対する割合で見ると 0.94%→0.69%→0.65%と、むしろ下がっている。
船の入れ替わりの影響を受けないよう、3年分そろっている庄三郎丸1隻で、 5〜9月の出船のうち釣果にシイラが入っていた割合を出した。
| 年(5〜9月) | 出船数 | シイラが釣れた出船 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 363便 | 90便 | 24.8% |
| 2025年 | 336便 | 76便 | 22.6% |
| 2026年 | 325便 | 65便 | 20.0% |
平塚・庄三郎丸の5〜9月の出船のうち、釣果にシイラが記録された出船の割合。同じ出船の重複報告は1便として数えた。
結果は24.8%→22.6%→20.0%と、ゆるやかな微減。 少なくとも平塚では、「高水温でシイラが増えた」と言える数字は出てこなかった。
「初記録」のワフーも、実は毎年来ていた
当サイトは8月、コラム「シイラ船の周りに現れた『幻の魚』ワフー」で、 庄三郎丸で釣れたワフー(沖サワラ)を「当サイトのデータベースで初めての報告」と紹介した。 今回、船長が書いた釣果報告の原文をさかのぼって読み直したところ、これは誤りだった。
| 年 | 庄三郎丸でワフーが釣れた日 | 日数 |
|---|---|---|
| 2024年 | 8月14日・19日、9月9日 | 3日 |
| 2025年 | 8月31日、9月3日・7日・10日 | 4日 |
| 2026年 | 8月26日・27日・31日、9月5日・16日 | 5日 |
庄三郎丸の釣果報告の原文で、ワフー(沖サワラ)が釣れたと書かれた日。掛けたが逃げた日や、姿を見ただけの日は含めていない。
2024年・2025年の報告では、ワフーは釣果の一覧ではなく「他にワフーが釣れました」のように本文の中で触れられていた。 そのため当サイトの集計では釣果として拾えておらず、「初めて」と見誤っていた。 2025年は伊豆・安良里のふじなみ丸(9月8日)や、 駿河湾・清水の大宝丸(10月7日)にも記録がある。
ワフーは毎年8月中旬から9月にかけて、シイラ船の外道として数回ずつ顔を出している魚だった。 今年の5日も、過去2年の3日・4日と大きくは変わらない。 記録的な高水温が新しい魚を連れてきた、という話ではなかった。
まとめ ─ 海は8月まで熱かった、魚の顔ぶれは例年どおり
- 平塚の8月の水温は前年より高く、「高水温の夏」というニュースとは食い違わない。ただし2024年8月はさらに高かった
- 9月はこの3年でいちばん低い24.9℃。今年は8月のあとの下がり方が早かった
- シイラが釣れた出船の割合は、同じ船で比べて24.8%→22.6%→20.0%と微減。全国の件数の「倍増」は、集めている船が3倍近くに増えたことによる見かけの増加
- 8月に「初記録」と紹介したワフーは、2024年・2025年にも毎年釣れていた。当サイトの集計の見落としだった
- 「暑い年だから魚が変わった」とは言えず、今年の平塚は水温も魚の顔ぶれも例年の範囲に収まっていた
水温は1隻の船長が書いた数字の平均で、気象庁の海面水温の観測とは測り方が違う。 シイラの割合は釣果として記録されたかどうかの集計で、海にいる数そのものを示すものではない。