「凪の日がいちばん釣れる」は
半分だけ正しい
─ 波の高さと釣果の関係を2万便で検証した

予報の波高を見て釣行日を決める人は多い。では実際、波が高い日は釣れないのか。 2026年の出船20,688便に、その日その海域の最大波高を突き合わせて魚種別に並べたところ、 魚によって答えが正反対に分かれた。 シロギスは波が上がるほどきれいに落ちる。スルメイカは逆に伸びる。 そしてイサキは、どの波高でもほとんど変わらなかった。

どうやって調べたか

2026年1月〜9月の釣果報告のうち、その日の海況データが取れている20,688便を対象にした。 出船日の最大波高で5つの区分に分け、魚種ごとに 「その日いちばん釣れた人の匹数」の中央値を出している。 平均ではなく中央値にしたのは、たまに出る大爆釣に引っ張られないようにするためだ。

出船の内訳は、0.5m未満が4,168便、0.5〜1.0mが9,063便、1.0〜1.5mが4,672便、 1.5〜2.0mが1,866便、2.0m以上が919便。実際の出船の半分以上は波1m以下で、 2m以上はごく一部しかない。この偏り自体が、後で触れる読み方の注意につながる。

凪ほど数が出る魚

魚種〜0.5m0.5〜1.0m1.0〜1.5m1.5〜2.0m2.0m〜
シロギス 62554623
カサゴ 2615812
マゴチ 1036

1出船あたりの最多匹数の中央値。波が上がるにつれて数字が下がっていくグループ。「—」は件数が15便未満で参考にならないもの。

波っ気があるほど数が出る魚

魚種〜0.5m0.5〜1.0m1.0〜1.5m1.5〜2.0m2.0m〜
スルメイカ 2029353640
ワラサ 1356
ハナダイ 2468
カツオ 2346
メダイ 56169

1出船あたりの最多匹数の中央値。波が上がるほど数字が伸びるグループ。「—」は件数が15便未満で参考にならないもの。

波高と関係が見えない魚

魚種〜0.5m0.5〜1.0m1.0〜1.5m1.5〜2.0m2.0m〜
イサキ 5050475050
アジ 4235383840
マダイ 23432
タチウオ 21222018
ヒラメ 23433
マダコ 758
カワハギ 12111012

1出船あたりの最多匹数の中央値。どの波高でも数字がほとんど変わらないグループ。「—」は件数が15便未満で参考にならないもの。

いちばん差が出たのはシロギス

シロギスは波0.5m未満で62匹、0.5〜1.0mで55匹、 1.0〜1.5mで46匹、1.5〜2.0mでは23匹まで下がる。凪と時化で3倍近い差があり、 今回調べた魚のなかでもっともはっきりした傾向だった。

シロギスは水深10〜20mの砂地を、軽いオモリで少しずつ引きながら探る釣りだ。 船が波で上下すると仕掛けが底を切ってしまい、あの小さなアタリも取りづらくなる。 カサゴ(26→15→8匹)や マゴチ(10→3匹)も同じ浅場の底物で、同じ形で数字が下がっている。 浅い底物ほど、凪を待つ価値があると言える。 なお同じ浅場でもマダコは7→5→8個と動かなかった。 底を這わせる釣りなので、船の上下の影響を受けにくいのだろう。

逆に、波があるほど伸びた魚

スルメイカは0.5m未満で20杯、 2.0m以上では40杯と、きれいに右肩上がりになった。 ワラサも1本→3本→5本→6本、 カツオも2本→3本→4本→6本と増えている。

ただしこれは「波が魚を食わせている」とは限らない。 スルメイカ船もワラサ船も、沖の深場や潮目まで走る釣りだ。 波が高い日に出せる船=沖まで行ける大きめの船であり、 なおかつ船長が「行く価値がある」と判断した日にしか出ない。 波そのものの効果と、船・判断の差が混ざっている可能性が高い。

波高別に見た、おおまかな傾向
  • 浅場の底物(シロギス・カサゴ・マゴチ)は凪が有利。波0.5mを超えたあたりから明確に下がる
  • 沖の青物・イカ(スルメイカ・ワラサ・カツオ・メダイ・ハナダイ)は波があっても落ちない。むしろ数字は上がる
  • イサキ・アジ・マダイ・タチウオ・ヒラメ・マダコ・カワハギは波高とほぼ無関係。予報の波高で日を選ぶ意味は薄い
  • タチウオは21→22→20→18匹と差が3匹ぶん。凪を待つほどの差ではない

いちばん意外だったのはイサキ

イサキは0.5m未満で50匹、0.5〜1.0mで50匹、1.0〜1.5mで47匹、 1.5〜2.0mで50匹、2.0m以上でも50匹。1,198便を5つに割っても、数字がまったく動かない。 コマセを効かせて群れを足止めする釣りなので、船が多少揺れても手数が落ちにくいのだろう。

マダイヒラメは、 どちらも1.0〜1.5mがわずかに最高値になる山型だった。 「少しシケたほうが魚が口を使う」という言い伝えに近い形ではあるが、 差は1匹ぶんで、はっきり効果があるとまでは言えない。

まとめと、読むときの注意

  • 「凪がいちばん釣れる」が当てはまるのは、シロギス・カサゴ・マゴチといった浅場の底物だけだった
  • 沖の青物・イカは波っ気があっても数字が落ちない
  • イサキ・アジ・マダイ・タチウオ・ヒラメ・マダコ・カワハギは波高とほぼ無関係
  • 予報の波高で迷ったら、狙う魚がどのグループかで判断すると無駄がない

いくつか大きな注意がある。まず、荒れた日はそもそも出船しないので、 「波2m以上」の919便は「それでも出せた船・出す価値があった日」に偏っている。 次に、荒天では狙う魚自体を変えることが多く、区分ごとに船の顔ぶれもエリアも入れ替わっている。 また波高はその日その海域の最大値で、実際に竿を出していた時間帯の波とは一致しない。 因果関係ではなく、あくまで「実績の並び方」として読んでほしい。

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