「月のない夜」のスジイカ280匹
実は満月に近かった
─ イカと月齢の関係を7魚種で検証した

茨城・鹿島の幸栄丸で8月30日、 「月のない夜」と船長が表現した中でスジイカ20〜280匹の入れ食いが記録された。 ところが実際の月齢データを確認すると、その夜の月齢は16.3(満月は14.8前後)とかなり満月に近い夜だった。 この食い違いをきっかけに、イカ7魚種・約6900件の釣果データで 「月明かりが少ない夜はイカが釣れる」という定説を検証してみた。

きっかけは「体感」と「実際の月齢」のズレ

幸栄丸の釣果報告には「月明かりに邪魔されることもなく、その闇の中でイカたちは最初から最後まで高活性」とあり、 船長は明らかに月の少ない夜として書いている。ところが当サイトが保持する月齢データでは、 この夜の月齢は16.3。新月が0、満月が約14.8なので、実際には満月からわずか1.5日しか離れていない。 天候や雲の状態、月の出入りの時間帯によって体感と数値がズレることはあるが、 せっかくなら感覚ではなく数字で「月とイカ」の関係を確かめてみたい。

どうやって調べたか

2024年1月〜2026年9月の釣果報告のうち、匹数の幅(「5〜20杯」のような船中の最少と最多)が書かれていたものを対象に、 魚種ごとに最少と最多の真ん中をとった数字を「その日の1出船あたりの釣果」とした。 出船日の月齢を、新月(0)±3.7日を「新月前後」、満月(約14.8)±3.7日を「満月前後」、 それ以外を「中間」の3つに分け、魚種ごとに平均した。

イカ類で当サイトに十分な報告件数がある7魚種(スルメイカ・マルイカ・ヤリイカ・ムギイカ・スジイカ・アカイカ・ケンサキイカ)を対象にした。 ただしアカイカ・ケンサキイカは母数が80件・35件と少なく、参考値として見てほしい。

結果 ─ 「新月が一番」だったのは0魚種

魚種新月前後中間満月前後
スルメイカ 21.0 杯25.6 杯23.3 杯
マルイカ 17.5 杯19.5 杯19.3 杯
ヤリイカ 10.0 杯10.8 杯11.3 杯
ムギイカ 36.2 杯34.1 杯45.0 杯
スジイカ 75.5 杯96.9 杯89.8 杯
アカイカ 9.3 杯19.0 杯29.0 杯
ケンサキイカ 48.3 杯39.9 杯35.1 杯

1出船あたりの平均杯数(2024年1月〜2026年9月)。出船数はスルメイカ2,571・マルイカ1,777・ヤリイカ1,334・ ムギイカ578・スジイカ94・アカイカ80・ケンサキイカ35。

7魚種のうち、「新月前後」が最高値になった魚種はゼロ。6魚種で「中間」または「満月前後」が最も良く、 新月前後はむしろ最低値になることが多かった。唯一ケンサキイカだけ新月前後が最高値だったが、 母数がわずか3件のため偶然の可能性が高い。

幸栄丸のスジイカに立ち返る

本題のスジイカを見ると、「中間」が96.9杯で最も良く、次いで「満月前後」が89.8杯、 「新月前後」は75.5杯と最も低い。8月30日の夜(月齢16.3)は「満月前後」の区分にあたり、 この区分の平均(89.8杯)自体は悪くない水準だった。

ただし280杯という数字は、その「満月前後」の平均をも大きく上回る。 月齢だけで説明できる範囲を超えており、新月の活性というより、その夜特有の当たり日だったと見るのが妥当だろう。 「月のない夜」という船長の体感表現も、天候や雲の状態、あるいは単なる言い回しであって、 実際の月齢とは別物だったと考えられる。

ムギイカ・アカイカは「満月前後」が意外と良い

ムギイカは満月前後が45.0杯で最高、新月前後(36.2杯)を大きく上回った。 アカイカも満月前後29.0杯・中間19.0杯・新月前後9.3杯と、月齢が満ちるほど数字が伸びる傾向がはっきり出ている (ただし母数が少ないため参考値)。「月夜は渋い」という通説とは逆の結果だ。

イカと月齢、7魚種のまとめ
  • 新月前後が最高値だった魚種はゼロ。「新月はイカが釣れる」は今回のデータでは確認できなかった
  • スルメイカ・マルイカ・ヤリイカ・スジイカは「中間」が最も良く、新月前後・満月前後ともにやや落ちる
  • ムギイカ・アカイカは逆に「満月前後」が最も良く、通説と反対の傾向が出た
  • 幸栄丸のスジイカ280杯は、月齢の区分平均を大きく超える特異な当たり日だった

まとめと、読むときの注意

  • 「月のない夜が釣れる」は魚種によってバラバラで、統一的な傾向は確認できなかった
  • 船長の体感表現(「月明かりのない夜」など)と実際の月齢は必ずしも一致しない
  • 爆釣の要因は月齢だけで説明できないことが多く、その日固有の条件(潮・水温・群れの回遊)が大きい

この集計は船宿の釣果報告がベースで、出船しなかった日・報告が出なかった日は集計に入らない。 差の大きさも1〜2割程度のものが多く、「月齢で釣行日を選ぶべき」と読むのも行き過ぎになる。 魚種ごとのページで時期とエリアの実績を見るのと合わせて、参考程度に使ってほしい。

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